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「・・・・っ」
「で、復活した俺が参戦して勝利に導いた」


形だけの勝利に。






言葉には自信をつけられるが、表情には無理だったようだ。プライドの高さの問題ではなかった。


「・・・・ヴィスウィルとルティナさんは恋人同士、だったんですか・・・?」
「あ?・・・ああ、そうか。お前記憶がないんだったな」


そんなことはもうとっくに聞いていると思っていたイヴァンは一瞬不思議に思うが、彼女に記憶がないことを思い出した。あまりにそんな素振りを見せないのでつい忘れてしまう。


「まぁ、どうだったかな。恋人、ではなかったと思うけどな」
「へ?」
「そんな恋人、とか友達、とか決まった関係はなかったんだと思うがな。あいつらにとっちゃただの知り合い、とそんな感じだっただけかもしれない」


実際は本人に聞いてみないと分からないことだが、なんとなく麗にも言っていることは分かった。
いなくてはいけない知り合い。その関係がいつまでも続くはずだったのだ。

























「―――っと、そろそろ戻るか。本当に風邪ひいちまう」
「・・・そうですね」


余韻など全く残さずにイヴァンがその場を立つ。麗にはそれが照れ隠しにも思えた。
この人は自分が思っている以上に弟子が大切でたまらないのだろう。でなければ、自分の命を懸けてまでヴィスウィルをとめようとはしなかったはずだ。
ルティナを失ったヴィスウィルに、イヴァンは何て声をかけたのだろう。きっと、何も言わなかったはずだ。何もできなかった自分が恨めしくて、腹が立って、あわせる顔もないくらい自分を責めたのだ。誰もが不可抗力だと言っても彼自身だけはそんな言葉で片付けられない。そんなことも簡単に予想できるくらい彼はヴィスウィル達を大切にしている。


「あ」


微笑ましそうに後ろからイヴァンの背中を見ていると、急に彼は足を止めた。


「何ですか?」
「・・・今のこと、あいつらには言うなよ。どーせまだ、うじうじ悩んでんだろ」
「―――・・・はい・・・」


















後書き
恐ろしく短いな・・・
前回切るとこ間違ったな・・・
次回からやっと明るい話になってきそうです。
最近暗すぎたからな・・・
20090526